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不動産売却の税金をシミュレーションしてみた!【現役税理士 解説】
2022年アイ工務店で家づくりをした くるみ 夫です。
これから新しい家に住み替えを検討している方の中には、今住んでいる自宅を売却して新しい家に住むという方もいらっしゃると思います。
昨今不動産価格が上がっていますので、今住んでいる家を査定したところ購入した当時よりも高く売却が出来そうだと思った方も多いのではないでしょうか。
そうした場合に気になってくるのが税金です。
そこで今回は、
- 購入した時より高く売却できた場合どのくらい税金がかかるのか
- 「3000万特別控除」と「住宅ローン控除」のどちらを選択したらよいのか
- 不動産売却の税金シミュレーション
この3点についてお話したいと思います。
約15年間税理士をしています。
税理士法人に勤めた後、今は独立して自宅で開業しています。
今回は税理士としての経験と、実際家を売却してどのように3000万特別控除を利用したのか実体験も踏まえてお伝えします。
不動産売却時の税金対策「3000万特別控除」とは?
自宅を売却したときに生じた所得(利益)から、最大3000万円まで控除ができるという制度になります。
つまり、購入した時より3000万高く売れてもこの制度を使えば税金が生じません。
また、所有期間の長短は要件にないので、購入して間もない物件でも適用することができます
ただし、新たに住替えた物件で住宅ローン控除を利用したい場合には、3000万特別控除と重複適用が認められていません。
どちらを適用するか選択する必要があります。
住宅ローン控除については、別記事で詳しく書きましたので読んでみてください。
不動産売却時の税金対策「3000万特別控除」(私たち夫婦の場合)
私たち夫婦は10年前に購入した共有名義のマンションの住み替えをきっかけに売却して利益が生じました。
そして新たに住宅ローンを組んで共有名義で戸建てを購入しました。
「3000万特別控除」と「住宅ローン控除」をどちらも選択できる状況でしたが同一人物の重複適用はできません。
しかもマンションも戸建ても共有名義でした。
シミュレーションをした結果がこちらです。
夫 | 妻 | |
---|---|---|
売却:3千万の特別控除 | ×不適用 | 〇適用 |
購入:住宅ローン控除 | 〇適用 | ×不適用 |
妻の確定申告では3000万特別控除の適用を選択して、住宅ローン控除は適用をしないことが一番お得になると分かり、一方で、自分の確定申告では住宅ローン控除の適用を選択して、売却の3000万特別控除は適用しないことにしました。
住宅ローン控除を利用した場合、他に税金はかからないの?
住宅ローン控除を利用した場合、譲渡所得税や住民税は納める必要があるよ。だからこそ、その費用も含めて「3000万控除」か「住宅ローン控除」どちらを利用した方がいいのか検討する必要があります。
シミュレーションで判断材料になる要素は次の通りです。
- 売却して生じた利益の金額
- 住宅ローン控除の控除見込み額
- 売却資産の持分割合
- 売却資産の所有年月(5年を超えるかどうか)
- 購入資産の持分割合(ローンの負担割合)
これらの要素を組み合わせて計算し、「3000万控除」利用か「住宅ローン控除」利用か、最適な答えを導きだしましょう。
【不動産売却時の税金対策】
まずは、住宅を売却したときにかかる税金・費用を把握!
まずは、住宅売却をした時にかかる費用をまるっと全て把握することがスタートです。
住宅を売却した時にかかる税金と費用は次の通りです。
- 仲介手数料
- 売買契約印紙税
- 抵当権抹消登記費用
- 譲渡所得税・譲渡住民税(3000万特別控除を利用しない場合)
① 仲介手数料
仲介業者に支払う手数料は宅地建物取引業で上限が定められていますので、それ以上の支払いになることはありません。また、あくまで上限のためキャンペーンなどによって手数料を値引きしてくれることもあります。
② 売買契約印紙税
不動産売買契約書に貼付する収入印紙の金額は印紙税法で定められています。契約書は通常、買主の分と売主の分の2通原本を作成するため、それぞれに印紙の貼付が必要になりますが、買主分の契約書に貼る印紙は買主が負担して、売主分の契約書に貼る印紙は売主が負担しますので、実際の負担は1通分になります。
節税の方法として、原本を1通だけにして、自分はそのカラーコピーをもらうということも可能ですが、高額で大事な契約のためあまりおすすめできません。
③ 抵当権抹消登記費用
売却時点で住宅ローンが残っている場合には、売却代金でローンを完済して売主分の抵当権を抹消してからでないと、買主に所有権移転や買主分の抵当権を登記することができません。
事前に住宅ローンを完済しますと、銀行から抵当権抹消手続きの案内が届きます。
自分で法務局に持ち込むか銀行経由で司法書士に依頼をするかになります。
自分の場合は妻の分は司法書士に頼み、自分の分は自ら法務局で手続きをしました。司法書士報酬は2万円弱ほどでした。自分で手続きする場合は2千円の登録免許税のみでした。後学のため自分で手続きをしましたが、正直な感想としては、司法書士報酬に依頼をしてしまった方が手間がかからずとても楽です。
④ 譲渡所得税・譲渡住民税(3000万特別控除を利用しない場合)
住宅を売却して利益が生じた場合は通常は3000万の特別控除を利用して譲渡所得税・譲渡住民税(以下「譲渡所得税等」)が生じないようにするのが一般的です。
新たに住宅ローンを組んで住み替えをして住宅ローン控除を選んだ場合は、譲渡所得税等については納税しなければいけません。
譲渡所得税を納める必要になった場合の計算方法
譲渡所得税等の利益については以下のように計算をします。
譲渡所得(利益)=売却代金△取得費△譲渡費用
※売却代金の注意点
売却代金には固定資産税清算金も含める必要があります。
※取得費の注意点
- 管理費修繕積立金、固定資産税などのランニングコストは取得費には含まれません。
- 購入代金が一括合計の場合は土地と建物に分けて、さらに建物については減価償却をしなければいけません。
- 土地と建物の分け方は固定資産税評価額で分けるのが一般的ですが、合理的な方法があればどの方法でも構いません。
- リフォーム費用は取得費に含めることができます。
※建物の減価償却費(住宅用)の計算方法
計算式:建物の購入代金×0.9×償却率(※1)×経過年数(※2)
※1 住宅の償却率
区分 | 木造 | 木骨モルタル | (鉄骨)鉄筋コンクリート | 金属造①(※3) | 金属造② |
---|---|---|---|---|---|
償却率 | 0.031 | 0.034 | 0.015 | 0.036 | 0.025 |
※2 6か月以上の端数は1年とカウントして、6か月未満の端数は切捨てます。
※3 軽量鉄骨造のうち骨格材の肉厚が3ミリ以下の建物が「金属造①」、3ミリ超4ミリ以下の建物が「金属造②」
譲渡所得(利益)は売却不動産の所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得に分けられます。
- 長期譲渡所得 譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものをいいます。
- 短期譲渡所得 譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のものをいいます。
譲渡所得(利益)の税率は以下になります。
譲渡所得税 | 譲渡住民税 | 合計 | |
---|---|---|---|
長期譲渡所得 | 15.315% | 5% | 20.315% |
短期譲渡所得 | 30.63% | 9% | 39.63% |
税金の納付時期は以下になります。
譲渡所得税 →翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告と納税を行います。
譲渡住民税 →翌年6月から本人納付(普通徴収)か給与天引き(特別徴収)にて納付を行います。
どちらにするかは所得税の確定申告書に選択する欄がありますのでその記入で決まります。
【不動産売却時の税金対策】
譲渡所得税・譲渡住民税はいくらかかる?(3000万控除を利用しない場合)
ケーススタディとして、譲渡所得税と譲渡住民税がいくらかかるのか
具体例をご紹介していきます。
7年7か月前に中古マンションを3千万円で購入して今年に入って5千万で売却し、購入時に追加で300万のリフォームを行っているケース
売却代金3000万 |
固定資産税清算金7万 |
合計3070万 |
購入代金 | 固定資産税評価額 | 按分後購入代金 | ||
---|---|---|---|---|
3000万 | 土地600万 | 土地1200万(3000万×600万/1500万) | ||
建物900万 | 建物1800万(3000万×900万/1500万) |
(建物購入代金1800万+リフォーム費300万)×0.9×鉄筋コンクリート償却率0.015×経過年数8年
減価償却費 2,268,000円
償却率は登記簿謄本や契約書を確認して構造の造りを確認しましょう
土地購入代金1200万+建物購入代金1800万△減価償却費2,268,000円
取得費 27,732,000円
- 特にマンションの購入代金は通常土地と建物が一括の金額のため取得費を計算する際は按分しなければいけません。戸建てでも契約書上一括になっている場合は同様に按分が必要です。
- 今回は固定資産税評価額にて按分をしました。按分後の購入代金は土地が1200万、建物が1800万です。
- 次に建物の減価償却費を計算します。リフォーム費は建物に含めることができます。償却率は建物の償却率と同じになります。
- 7年7か月住んでいますので、7か月の端数を1年に繰り上げて8年間分の減価償却費となります。
- 土地と建物とリフォーム費の合計金額から8年間分の減価償却費を差し引くと取得費になります。
購入時の契約書や領収証はきちんと取っておきましょう。どうしても見つからなかった時は、証拠性の確度の高い別の資料を提出しましょう。
仲介手数料 | 1,716,000円 |
売買契約印紙代 | 10,000円 |
抵当権抹消登記費用 | 20,000円 |
合計 | 1,746,000円 |
売却代金(固定資産税清算金含む) | 取得費 | 譲渡費用 | 譲渡所得 |
---|---|---|---|
50,070,000円 | 27,732,000円 | 1,746,000円 | 20,592,000円 |
譲渡所得 | 税率 | 税額 | |
---|---|---|---|
譲渡所得税 | 20,592,000円 | 15.315% | 3,153,600円 |
譲渡住民税 | 5% | 1,029,600円 |
7年7か月前に中古マンションを3千万円で購入して今年に入って5千万で売却し、
購入時に追加で300万のリフォームを行っているケース
譲渡所得税 3,152,600円
譲渡住民税 1,029,600円
合計 4,182,200円
このケースでは、3000万控除を利用しない場合、約420万の譲渡所得税と譲渡住民税がかかる試算になりました。
【不動産売却時の税金対策】
3000万特別控除/住宅ローン控除 どちらが最適かシミュレーション!
このシミュレーションで「3000万控除」利用か「住宅ローン控除」利用か、最適な答えを導きだしましょう。
2022・2023年入居の場合と令和2024・2025年入居の場合、さらに長期譲渡所得と短期譲渡所得とに分けました。長期譲渡所得と短期譲渡所得については、このページの上部で解説しました。
合計4つのケースのシミュレーションになります。
表内に金額を書いています。この金額よりも実際の譲渡所得が少なければ、住宅ローン控除を利用した方が有利になり、
逆に多ければ3000万特別控除を利用した方が有利になります。
共有名義の場合もやり方は一緒で、各人ごとに住宅ローンの控除見込み額と譲渡所得税を計算して有利不利を比較することになります。必ずしも最大控除額まで住宅ローン控除を受けるわけではありませんので、各人ごとの控除見込み額を計算する必要があります。
シミュレーション表の見方
住宅ローン控除有利← | |
→3千万の特別控除有利 |
薄い青=住宅ローン控除有利
薄いピンク=3000万控除有利
新居は2022・2023年に入居・旧居売却は長期譲渡に該当するケース
借入限度額 | 最大控除額 | 長期譲渡所得(税率20.315%) | |||||||
長期優良住宅 | 5000万 | 455万 | 22,397,200円 | ||||||
ZEH | 4500万 | 409.5万 | 20,157,500円 | ||||||
省エネ | 4000万 | 364万 | 17,917,700円 | ||||||
その他 | 3000万 | 273万 | 13,438,300円 | ||||||
中古省エネ | 3000万 | 210万 | 10,337,100円 | ||||||
中古その他 | 2000万 | 140万 | 6,891,400円 |
2022・2023年入居で長期優良住宅を購入して最大控除額455万の住宅ローン控除が受けられるというケースでは、旧居売却によって長期譲渡所得が22,397,200円以下であれば住宅ローン控除が有利で、それを超えると3000万特別控除が有利となります。
新居は2022・2023年入居・旧居売却は短期譲渡に該当するケース
借入限度額 | 最大控除額 | 短期譲渡所得(税率39.63%) | |||||||
長期優良住宅 | 5000万 | 455万 | 11,481,200円 | ||||||
ZEH | 4500万 | 409.5万 | 10,333,000円 | ||||||
省エネ | 4000万 | 364万 | 9,184,900円 | ||||||
その他 | 3000万 | 273万 | 6,888,700円 | ||||||
中古省エネ | 3000万 | 210万 | 5,299,000円 | ||||||
中古その他 | 2000万 | 140万 | 3,532,600円 |
2022・2023年入居で長期優良住宅を購入して最大控除額455万の住宅ローン控除が受けられるというケースでは、旧居売却によって短期譲渡所得が11,481,200円以下であれば住宅ローン控除が有利で、それを超えると3000万特別控除が有利となります。
2024・2025年入居・旧居売却は長期譲渡に該当するケース
借入限度額 | 最大控除額 | 長期譲渡所得(税率20.315%) | |||||||
長期優良住宅 | 4500万 | 409.5万 | 20,157,500円 | ||||||
ZEH | 3500万 | 318.5万 | 15,678,000円 | ||||||
省エネ | 3000万 | 273万 | 13,438,300円 | ||||||
その他 | 0万 | 0万 | 0円 | ||||||
中古省エネ | 3000万 | 210万 | 10,337,100円 | ||||||
中古その他 | 2000万 | 140万 | 6,891,400円 |
2024・2025年入居で長期優良住宅を購入して最大控除額409.5万の住宅ローン控除が受けられるというケースでは、旧居売却によって長期譲渡所得が20,157,500円以下であれば住宅ローン控除が有利で、それを超えると3000万特別控除が有利となります。
新居は2024・2025年入居・旧居売却は短期譲渡に該当するケース
借入限度額 | 最大控除額 | 短期譲渡所得(税率39.63%) | |||||||
長期優良住宅 | 4500万 | 409.5万 | 10,333,000円 | ||||||
ZEH | 3500万 | 318.5万 | 8,036,800円 | ||||||
省エネ | 3000万 | 273万 | 6,888,700円 | ||||||
その他 | 0万 | 0万 | 0円 | ||||||
中古省エネ | 3000万 | 210万 | 5,299,000円 | ||||||
中古その他 | 2000万 | 140万 | 3,532,600円 |
2024・2025年入居で長期優良住宅を購入して最大控除額409.5万の住宅ローン控除が受けられるというケースでは、旧居売却によって短期譲渡所得が10,333,000円以下であれば住宅ローン控除が有利で、それを超えると3000万特別控除が有利となります。
【不動産売却時の税金対策】
3000万特別控除/住宅ローン控除 どちらが最適か具体例
- 新居 令和6年入居 ZEH対応 借入額6000万(夫5000万、妻1000万)
- 住宅ローン控除見込み額(夫318.5万、妻約72.8万)
- 旧居 長期譲渡該当 譲渡所得1500万 持分(夫3/5、妻2/5)
住宅ローン控除 | 有利不利 | 譲渡所得税等 | 税率 | 譲渡所得 | |
---|---|---|---|---|---|
夫 | 318.5万 | > | 1,828,350円 | 20.315% | 900万 |
妻 | 72.8万 | < | 1,218,900円 | 20.315% | 600万 |
今回は住宅を売却して利益が生じたときにかかる税金・費用の解説と「住宅ローン控除」か「3000万特別控除」かどちらが有利かというシミュレーションを解説してみました。
今回は合計金額のみを単純に比較していますが、住宅ローン控除は13年かけて効果があるのに対して譲渡所得税等は初年度に一度に納税が生じます。
資金計画上一度の納税の方が厳しいと判断することもあり得ますので、色々な事情を考えて総合的に判断をされることをおすすめします。
ブログ「めぐりのよい家 | アイ工務店で建てた家に住んでみて」では、その他にもアイ工務店で建てた家づくりの試行錯誤や、我が家で採用した商品のレビューを掲載しています。是非みてみてくださいね。